「みちびき」と「きく8号」を用いた
GPS津波計による早期津波警戒システムによるデータ公開

実験データ公開
  • 平成25年度実験
     実験は終了しました。閲覧、ありがとうございました。
     実験結果は、衛星通信実験(2014年1月3日-5日)結果速報[PDFファイル]をご覧ください。
  • リアルタイムデータ表示
     平成26年度実験準備期間:2014年6月1日~6月8日 9:00~17:00
      (予備実験レポート)
     平成26年度実験予定期間:2014年6月15日~6月21日 9:00~17:00
  •   (本実験レポート)
     衛星通信実験を無事完了することができました。長期間の閲覧、ありがとうございました。
    この実験では、継続的データ公開を実証的に行うとともに、多くの知見を得ることができました。
    これらの成果は、沖合設置における距離制限のないGPS津波計の社会実装の中で活用していきます。
  • 過去データ表示



共同実験概要
 GPS津波計は、東日本大震災における津波において津波予報に一定の貢献をしました。 一方で、課題も浮き彫りになりました。 すなわち、「もっと沖合に設置せよ」と「障害があってもデータ断とならないようにせよ」との要請であり、 これらの克服が本実験の目標であります。 これには、GPS測位法とデータ通信方法の技術面での改善が必要になります。 これまでに、GPS測位法については解決済みであることから、準天頂衛星「みちびき(QZSS)」と技術試験衛星Ⅷ型 「きく8号(ETS-Ⅷ)」を活用して、通信機能面での改善に取り組み、今後の早期津波警報システムを飛躍的に 機能向上させる基本技術を確立します。
 この研究は、科学研究補助金基盤研究(S)21221007及び、文科省宇宙科学技術推進調整委託費で推進しています。
<技術内容>
<共同実験機関>

<平成26年度本実験レポート>

1.平成26年度衛星通信実験

平成25年度の実験は、「みちびき」から送出した測位用補正(LEX)信号を用いたGPS津波計ブイ上での精密測位と、「きく8号」による測位結果の伝送が出来ることを実証的に確認した。平成26年度では、この成果に次の3項目の検討を加えて、実用上の課題と解決策を明確にすることとした。

(1)「みちびき」の本来的な機能である準天頂衛星としての役割をブイ上の精密単独測位に活かすため、「みちびき」対応GPS受信器の機能を確認する。

(2)可能な範囲で長期の伝送実験を行い、種々の気象・海象条件下でのシステムの状況を把握する。課題に対しては、解決の方向性を明らかにする。

(3)「きく8号」の陸上基地局の複数化を図り、非常時への対応力の強化を試行する。

2.本実験実施

上記の3項目の検討に加えて、直前に実施した予備実験において明らかになった課題も含めて検討を行った。

(1)準天頂衛星を用いた測位について、予備実験によって精密単独測位GPS受信器の機能を確認したとみられたが、ブイ上でストアしたデータの回収・詳細解析の結果、ソフトウエアの不調によりGPS衛星のみの測位であったことが確認された。このことから、予備実験レポート2.(2)の記述の趣旨である「準天頂衛星として測位に取り込んだ精密単独測位GPS受信器の性能を確認」との文言を削除した(H26/07/12)。したがって、本実験においてはGPS衛星のみの測位となり、GPS受信機の性能確認実験は別途行うこととした。

(2)24時間以上の継続的観測を行う。

(3)衛星通信実験の陸上基地局を大阪と筑波に設置し、伝送路の複線化の機能確認を行う。この検討項目は、本実験期間中に津波の発生などの非常事態が生じた場合のリアルタイムデータ公開対応への備えでもある。

(4)「きく8号」の受信用大型展開アンテナ(LDR)が低雑音増幅器(LNC)の不具合で使用できず、本実験ではアンテナゲインが約15dB低い代替えの小型パラボラアンテナ(HAC)を使って受信しているため、予備実験において悪天候下で受診率の低下が見られた。これに対して、複数の復調器(DEMOD)を用いて、同じ信号を受信し、正常に同期が行われた復調器のデータを利用することが有効であることが、予備実験で明らかになっていた。そこで、復調器3チャンネルの受信データから正常データを抽出するソフトウエアを実装し、その効果の確認を行った。

3.実験結果

(1)連続観測・通信実験及び陸上基地局複数化

2014年6月18日9時前から開始し、6月19日18時過ぎまでの33時間の連続実験を行った。実験期間中にリアルタイム公開した測位・伝送データを図1及び図2に示す。この間、陸上基地局の切り替えを2回実施した。まず、6月18日17時頃に大阪基地局を筑波基地局に切り替えた。続いて、6月19日9時頃に筑波基地局から大阪基地局に戻した。切り換えに要する時間は数分であり、伝送路の複線化の有効性を実証できた。

図1 2014年6月18日からの連続観測・通信実験結果(1日目)

図2 2014年6月18日からの連続観測・通信実験結果(2日目)

(2)復調器複数化

連続観測・伝送期間中の海象条件は、図1及び図2に示すようにやや荒れた状況であった。33時間の有義波高とデータ伝送率を図3に示す。荒れた海象条件の中でも、6月19日午後から凪に向かい、有義波高値が徐々に低下に向かって伝送率が回復している。

また、有義波高とデータ伝送率の相関を図4の赤色の丸と線で示している。青色の丸と線は、予備実験時のデータを示している。本実験では、有義波高値の変化は少なかった。この条件下での伝送率には復調器3チャンネルの複数化の効果が現れ、赤線と青線の近似直線の比較から約10%の改善が確認できた。

図3 連続観測・伝送実験期間中の有義波高とデータ伝送率

図4 有義波高とデータ伝送率の相関

平成26年7月12日
研究代表者 寺田幸博


<平成26年度予備実験レポート>

1.平成26年度衛星通信実験

平成25年度の実験は、「みちびき」から送出した測位用補正(LEX)信号を用いたGPS津波計ブイ上での精密測位と、「きく8号」による測位結果の伝送が出来ることを実証的に確認した。平成26年度では、この成果に次の3項目の検討を加えて、実用上の課題と解決策を明確にすることとした。

(1)「みちびき」の本来的な機能である準天頂衛星としての役割をブイ上の精密単独測位に活かすため、「みちびき」対応GPS受信器の機能を確認する。

(2)可能な範囲で長期の伝送実験を行い、種々の気象・海象条件下でのシステムの状況を把握する。課題に対しては、解決の方向性を明らかにする。

(3)「きく8号」の陸上基地局の複数化を図り、非常時への対応力の強化を試行する。

2.平成26年度衛星通信実験

(1)実験機器の設置

ブイ及び陸上基地局の設置を5月中に終えた。

(2)準天頂衛星を用いた測位

6月1日に、平成25年度の実験期間と同様のおだやかな海象条件下で実験を開始した。図1に示すように、データ伝送実験結果も前回と同様に良好な結果が得られた。

図1 6月2日(月)の衛星通信実験結果

(上図は波浪+潮汐、下図は津波+潮汐の変化を表示している。両図の横軸は経過時刻、縦軸はGPS測位で用いられるWGS84座標系の標高であり、津波・波浪・潮汐は海面の標高の変化として観測できる。)


(3)荒天・高波高時の課題

今回の実験目的の一つである荒天時のデータ伝送状況を確認した。梅雨の季節であり、6月3日から少しずつ海が荒れてきた。6月4日から6月5日にかけて高知県では550mmを超える大雨となった。予備実験終了の6月7日まで荒れ模様が継続した。このことから、図2に示すように、種々の海象条件下でのデータ伝送率を求めることができた。高波高時の伝送率の低下は、ブイの動揺(傾斜計を搭載していないが、高波高ではブイ傾斜運動も大きくなる傾向にある)による衛星方向への送信信号の強度(EIRP)の変動が主な原因である。これは、「きく8号」の受信用大型展開アンテナ(LDR)が低雑音増幅器(LNC)の不具合で使用できず、本実験ではアンテナゲインが約15dB低い代替えの小型パラボラアンテナ(HAC)を使って受信しているためである。「きく8号」の本来の運用であればこの状態が発生しないところであるが、結果として伝送率と波高との関係の貴重なデータを得ることが出来た。

図2 有義波高とデータ伝送率の相関

(4)荒天・高波高時の課題の克服

受信率への影響因子として、陸上基地局においてブイからの弱い信号を短時間に補足(同期)し、復調しなければならないことが挙げられる。ブイからの信号は弱いため、本実験システムでは通信速度を非常に低速なものにして対応している。このため、ブイから伝送できる情報量は少なく、陸上基地局が信号に同期するために用いる情報も少なくなる。さらに、通信方式に時分割多重(TDMA)をもちいているため、4秒に1回、この信号に同期することが必要になる。ブイからの信号にはブイの動揺によるレベル変動の他にも衛星の動きによるドプラシフト(周波数の変化)が伴っているため、荒天時はこの同期に失敗する確率が高くなる。本実験の衛星通信システムの性能による伝送エラーについては、これまでの実験で得られた基礎データを基にシステム設計を行うことで改善できる。

ブイからの信号の同期に失敗する確率を減じるための簡易な対応としては、複数の復調器(DEMOD)を用いて、同じ信号を受信し、正常に同期が行われた復調器のデータを利用することがある。図3は、6月6日の3つの復調器のフレームエラーレート(ここでは、毎時間900個のデータセットの送信に対する伝送不可の比率)を示している。それぞれの復調器単体でほぼ同じ値を示しているが、必ずしも同時にフレームエラーが発生しているわけではなく、いずれかの復調器で正常に同期し、受信できている場合がある。このことから、3つの復調器で正常な受信をしているチャンネルのデータを優先的に拾い上げれば、図中に紫色で示したTotal FERの値が得られ、数十%の改善が図れる。

図3 6月6日のフレームエラーレート(FER: Frame Error Rate)

(5)陸上基地局の複数化

衛星通信実験の陸上基地局は大阪に設置している。何らかの原因でこの部分が不調になれば、東日本大震災の場合の問題と同様の通信途絶が生じることになる。これへの対策は複線化であることは容易に理解出来る。今回の予備実験では、JAXA筑波宇宙センター(茨城県つくば市)にも陸上基地局を設け、両者を補完的に使用出来る体制を整えた。6月5日にこの切り替え実験を行い良好に動作することを確認した。この切り替え実験に先立って、「みちびき」へのLEX信号送り出しの有線回線の不調が発生し、あらためて複線化の重要性を再認識した。

今回は、この体制が確立できたことから、本実験期間中に津波の発生などの非常事態が生じた場合には、24時間体制でのリアルタイムデータ公開を行う予定である。

平成26年6月11日 平成26年7月12日一部修正
研究代表者 寺田幸博


<平成25年度実験レポート>
2014年1月5日
 1月3日に海象条件が回復し機器の再設置を行った結果、順調に衛星通信実験を遂行できています。3日間の実験結果を速報します。この速報に掲載したデータは、本ホームページの過去データ表示でもご覧いただけます。
衛星通信実験(2014年1月3日-5日)結果速報 [PDFファイル]

2014年1月3日
 ようやく、ブイ上で作業ができる程度に海象条件が回復しました。本日早朝より出港し、GPS計測装置を再設置いたしました。10時頃から測位を開始し、リアルタイムデータが陸上に届いています。ご覧になって下さい。
 今回の実験では、電源不足とそれに伴う機器故障のため、予定した実験期間の大半でデータが得られない不手際がありました。この実験にご協力いただきました方々、そして関心をもってこのサイトにお越しいただいた方々に、ご迷惑とご心配をおかけしたことを申し訳なく思っています。

2013年12月27日
 本日現在も、海上作業が出来る状態に海象状態が改善されていません。そのため、リアルタイム表示が出来ない状態が続いています。ここでは、これまでの予備実験と本実験直前で得られた衛星通信実験結果を示します。
予備実験における衛星通信実験結果 [PDFファイル]

2013年12月23日
 海象条件が回復し、調査と修復に向けて出港しました。調査の結果、突風による太陽電池の損傷は無く、蓄電能力の低下によることが判明しました。準備していた新しい蓄電池を補強のために投入し、電源の問題は解決しました。一方、この間にGPS測位ソフトを導入したコンピュータが突発停止と起動を繰り返したため、動作しない状況が発生していることが判明しました。当該機器材を持ち帰り修理しますが、明日から海象条件が下り坂の状況です。出港可能な状況になり次第、再度装着して復旧します。

2013年12月18日
 現在、実験データが表示できていない直接の原因は、ブイ上機器の稼働に必要な電力が不足しているため、GPS測位ができていないことにあります。電力不足は、バッテリーの蓄電能力の低下か、12/10未明に竜巻を発生させながら高知県地方を通過した寒冷前線の突風による太陽電池のダメージと推測しています。不具合発生以降、荒れた海象条件が継続し、出港できない状況です。海象条件が回復次第、調査・補修を行う予定です。

研究チーム代表 寺田幸博

【注意事項】
沖合約35kmの黒潮牧場16号ブイ周辺海域の波浪、沖潮位偏差、潮汐データを表示しています。文科省宇宙科学推進調整委託費(研究代表者:高知高専寺田幸博)において、実験値として得られた観測データです。このデータを使用することに制限はありませんが、この情報を使用したことによる損害などについては一切責任を負いません。平成25年11月25日